山口県山口市。瀬戸内海に面した阿知須(あじす)の地に、礒金醸造株式会社はあります。

創業は明治44年(1911年)。前身の礒金醸造工場から数えて私、礒金大樹で四代目となります。小さな醸造元ですが、先人より受け継いできた昔ながらの製法そのままに麹菌と向き合う日々を送っています。

醤油や味噌は、お陰様で地域の人びとに愛され、「この土地の味」として根付いています。近年は発酵食品の健康への効果が注目されてきたこともあり、生麹や甘酒を求められる方も増えてきました。そうした需要に応え、これまでにない新商品などの開発にも取り組んでいます。

1999年には台風の直撃により、山口県は甚大な被害を受けました。海からすぐの場所にある私どもの醤油蔵も高潮に襲われ、壊滅的な状況となりました。そのとき、父は「廃業も考えた」そうです。当時高校生だった私は、家業がそこまで危機に陥っているとは知りませんでした。いま私がこうして醸造を続けられるのも、父が踏みとどまり、消えかけた伝統の灯を守り抜いてくれたおかげです。

技術革新やAIの進歩など、世界ではますます合理化・効率化が進んでいます。でも、どれほど世の中のスピードが速くなっても、私たちはこれまで通り真摯に、丁寧に麹菌の声に耳を傾け、この地の自然環境に育まれて来た手作りの味を育てていきます。そんな「いそかね」の商品を、お客様に「おいしい」と感じていただけるなら幸甚です。